コロナ電業 TR-10RDX使用レポート
 トランスミッタの新製品を買ってきた

TR-10Rを発売しているコロナ電業より、新製品が発売されていると聞きました。
 コロナ電業のページを探しても情報がありませんでしたのでガセかと半分諦めていました。
 しかし!先日秋葉原店頭で商品を見つけ、値段の安さも手伝ってか即購入してしまいました。

 パッと見はカーショップで発売されている安物LCトランスミッタ臭がぷんぷんします。
 値段も大してかわりませんし(私は4,500円で購入)、正直買うつもりはまったくなかったのですがパッケージの「PLL方式だから受信感度が安定!」を見て気付いたら購入していました。

 うーん、MC145163なんて単価的にも部品残存数的にも絶対使う訳ないし・・・。
 やっぱりモトローラの代替PLLIC+NJM2035だと勝手に思い込むことにしました。

 PLL制御の7CHは良いのですが、肝心の設定周波数がパッケージのどこにも明記されていません。これは私にとってかなり問題ですが、商品のコンセプトがカーステレオなどへの音声送信なのであまり重要視されていないのでしょうね。
 店員さんへ確認しようかとも思いましたが、たかが5,000円程の商品で店員さんに手間をかけるのも何なので気にしないことにしました。

 また、この商品はコンデンサマイクを内蔵しており、全面のスイッチを切りかえることにより
 内蔵マイクと外部入力を切りかえられるようです。ミニFMトランスミッタとして使うならばあまり使わない機能ですが、集音などの用途には良いかもしれませんね。

 本体筐体に関しては、従来の同社製品の黒ボディから一新され、最近よくあるシルバーっぽい感じのプラスチックのものです。
 内容物は小型簡易アンテナ、ミニジャック音声ケーブル、006Pタイプ乾電池、本体です。
 保証書はパッケージ裏に印字していますので大切に保管します。


 それにしても、キャッチコピー1番の「
PLL方式だから受信感度が安定!」とはどういう意味でしょうかね???
添付品

 左側から、標準アンテナ、音声接続ケーブル、テスト用006P乾電池、本体です。
 テスト用の電池はもろに東南アジアの雰囲気をかもし出しています(笑)

 本体全面

 左から、内蔵マイク、マイク/外部入力切替ボタン、電源ボタンです。シンプルに、かつ機能的にまとまっていると思います。
 電源ボタンをONにすると、緑色のLEDが点灯します。乾電池運用時の消費電力への影響が懸念されますね。同様に、音声切り替えボタンをマイクにするとボタンが赤く点灯します。
 本体背面

左からアンテナ接続端子、L/R音声入力端子、周波数設定端子、電源外部入力端子となります。3SWタイプのDipスイッチは珍しいですね。
アンテナ端子はBNCとは言いませんが、せめてRCAにしてほしかったです。
音声入力端子にしても、前製品(TR-10R)が金メッキRCAだったので、この点に関しては残念ながらスペックダウンです。
 しかしポータブルオーディオ機器の出力端子は、圧倒的にミニジャックが多いですのでポータブルオーディオ同士を接続する場合はこちらのほうが
都合が良いと思います。
 また、設定周波数が高いバンドになっています。既存FM局と干渉しないようにするための処置でしょう。
周波数設定表
CH 送信周波数 SW1 SW2 SW3
1 88.0MHz OFF OFF OFF
2 88.2MHz ON OFF OFF
3 88.4MHz OFF ON OFF
4 88.6MHz ON ON OFF
5 88.8MHz OFF OFF ON
6 89.0MHz ON OFF ON
7 89.2MHz OFF ON ON
 内部写真

 さっそく内部を拝見することにしましょう。本体を開けてしまうと、メーカー保証が効かなくなってしまいますので本体を開ける方は気をつけてくださいね。
 非常にコンパクトにまとめられています。とは言っても手抜きは見当たりません。
 ここで一番最初に目に飛び込んだのはROHMのLSI!と無印の水晶が隣に並んでいます。

 「えっ?モトローラじゃないの??」

 搭載されているLSIはROHMのFM送信機能がすべて入った高性能ワンチップLSIです。
 これにはかなり驚きました。こんな値段で手に入るとは思っていませんでしたから。
 小売されないようならば、カーステレオのCDチェンジャから無理やり外してでも使おうと思っていました。
 ・・・あ、カーステメーカーに問い合わせれば保守部品で取れますかね? これは音質面においても期待大です。
「ROHM BH1416F アップ」
実物は初めて見ました。
写真を撮るためにマーカーをアルコールで消しました。
「乾電池BOX横のバージョン表記」
前機種であるTR-10Rの基板には Ver1.0 の
表記があったのでしょうか?

 基板アップ

 背面は2個の抵抗以外はパーツは実装されておらず、残りはプリントパターンのみです。
左側のケースは006P乾電池が格納されます。見にくいですが、乾電池下にコンデンサマイクがあります。
 006Pは逆接続しやすいので心配でしたが、ダイオードをかませてありますのでもし誤接続した場合でも安心です。
 目立つのはやはりROHMのLSIと水晶です。Trは合計3つ使用されています。
 この価格でこの部品点数ですと、私は大満足です。自分でパーツ集めてきてもこの値段で同じ物を製作するのは難しいでしょう。

 「TEST」とあるパターンは調整用の端子を接続するのでしょうか。

 暇があったら回路図を起こそうと思っています。
 といってもメーカーリファレンス回路+α程度だとおもいますので期待せずにお待ちください。
総評

 価格を考えても、現在市販されている製品の中でイチオシのトランスミッタといえます。
 このトランスミッタがある前は、YO-10Bをオススメしてきましたが、こちらはなんといっても完成品ですし、メーカー保証一年まで付いています。
 ミニFM初心者の方にも、安心して導入して頂けるかと思います。値段以上の価値は十分あると思われます。
 今までLC発振の安物トランスミッタを購入されて痛い目にあわれた方にも、はじめてトランスミッタを購入される方にも安心してお勧めできる製品です。

 音質に至っては予想に反しかなり高音質、大健闘です。
 今まで私が触ってきた市販カー用品トランスミッタ数十種類の中でも群を抜いて音が良いです。
 ・・・といってもこればかりは個人主観ですのでサンプルをお聞き頂くほうが確実でしょう。しかしきっと満足して頂けると思います。
 サンプル音源は下部に置いておきますのでよろしければご試聴下さい。

 ただし、送信出力がかなり低く、送信アンテナが短いです。とは言ってもクルマ内からカーステへ送信するには十分すぎる出力です。
 新電波法に対応した結果と思われますが、環境によっては電波法許容範囲を大幅に下回る事でしょう。
 アンテナをビニール線に変更するだけでも、大幅な飛距離アップが望めると思います。

 ミニFM送信機として使用する場合はさすがに送信出力が低すぎるので、専用バッファアンプを製作する予定です。
 稼動テストまで完了しましたら、別ページにてレポート致します。

 この価格でこの性能が引き出せるのはなんといってもROHMのLSIのおかげ以外の何物でもありません。
 早くこのチップが小売され、個人でも扱えるようになる日が1日でも早く来ることを待ち望んでいます。

コロナ電業 TR-10RDX 導入時の注意点
○メリット ×デメリット
・専用LSIの使用で高音質
・PLL採用により、送信周波数の変動が非常に少ない
・比較的入手が簡単
・価格もPLL採用製品の中では最安
・完成品につき、再現性が高い
・送信出力が弱い(アンテナ交換で改善可)
・外部電源は、良質なものを使用すること
・消費電流が多い
・電源電圧が若干高め(DC9V)
・送信周波数帯が高い(88MHz超え)
 サンプル音源
 
 SONY DVD Player DVP-NS500P → TR-10RDX → SONY MHC-S70C → PCサウンドブラスター の流れです。
 録音フォーマットは 44.1KHz 16Bit Stereo のWAV形式です。無圧縮につき、16秒間と短いですがご了承下さい。


 サンプルデータ(オリジナル)

 サンプルデータ(上記の信号の流れを経過した後のデータ)

2003年03月30日追記

 匿名の方より、TR-10RDX向けのGGアンプを製作し、良い結果が得られたとのご連絡を頂き、同時に本ページへの掲載許可も頂きましたのでご紹介します。
 貴重な情報を提供をして頂き、掲載許可も快く許可してくださいまして、ありがとうございます。
 GGアンプ回路図

 手書きの回路図を頂きましたが、webに掲載するにあたり、PCで書き直させてもらいました。
 コイルの部分は改変させていただきました。
空中配線GGアンプアップ
回路が単純なため、空中配線で作成します。
GGアンプ実装
空きスペースを利用し、効率良く配置されています。
 実際のGGアンプと、TR-10RDXに実装した様子

 高周波回路は、回路図通り製作しても自身の発振やら回り込みやらで正しい動きをしないことがよくあります。
 基板1枚仕上げるのも、コンピュータで自動デザインできるデジタル回路と違い、高周波基板設計は経験とカンによる職人技が要求されます。
 今回のGGアンプにおいても非常に発振しやすいようですので、スペースが許す限りシールドを施す必要があります。

 今回は、GGアンプの内蔵型をご紹介しましたが、私は外付け型の同回路GGアンプを製作してみようと思います。
 良い結果が得られた場合、再びここでご紹介致します。

※本体を改造する場合、メーカー保証は一切受けられなくなりますので事故責任で作業を行って下さい。
2004年02月09日追記

 TR-10RDXに接続できる外部アンプの製作をしました。

広帯域増幅IC NEC μPC1677C使用 TR-10RDX専用 FMトランスミッタ送信アンプ製作

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