広帯域増幅IC NEC μPC1677C使用 TR-10RDX専用 FMトランスミッタ送信アンプ製作
まだ工事中です!!!(2004年02月09日)
FMトランスミッタ専用ミニパワー送信アンプの製作
 以前から本サイトでご紹介しているコロナ電業 Telstar TR-10RDX ですが、購入された方は既にお悩みかと思いますが送信出力が極端に低く、
環境次第では電波法許容範囲を大きく下回ってしまいます。

 特に、送信機から送信アンテナまで距離が長かったり損失が高いケーブルを使用されている方などは満足できる出力を得ることは難しいでしょう。
そこで、ご要望が高かった送信機とアンテナの間に挿入する小電力アンプの製作をすることにしました。

 今回使用する10年程前に登場した NEC μPC1677C というデバイスは、広範囲において高利得で動作するMMIC-ICです。
 アマチュアにも使いやすい、DIP-8PINパッケージで、価格も300円前後とかなり便利なデバイスです。
 その扱いやすさ上、メーカー製の機械にも採用されているほどです。

 発振さえ注意すれば、外付け部品を殆ど付けることなく確実に動作します。10mw入力時には100mw(0.1w)もの出力を得ることができますので、
パワーモジュールのドライブ段としても活用できます。100mwは飽和出力時ですので、今回は余裕を持って60mw〜80mw出力を定格と致します。
 このデバイスの難点としてはディスコン(製造停止)になってから時間が経っていますので入手が困難なことが挙げられます。また、スプリアスが
大変強いため、出力側にローパスフィルタを取り付けることが必須です。
表1.μPC1677C周波数帯別出力
 NEC製μPC1677Cの使用周波数別出力電力グラフです。飽和出力時のデータですのであまり参考になりませんが、+3dBm(mw)入力時には5Vを印加すると+20dBm(100mw)の出力となるようです。80MHz帯を赤線で示してあります。このICの定格電圧はDC5Vです。5.5Vを印加すると2dBm程出力がアップします。スプリアスや発熱で特に問題がないことがわかりましたら試してみたいと思います。
表2.μPC1677C入出力パワー
 NEC製μPC1677Cの入力レベルに対しての出力レベルグラフです。これは500MHzの測定データですので今回トランスミッタで使用する周波数帯の80MHz付近では、2dBmほどゲインが落ちます。TR-10RDX標準状態の出力は1mW前後だと思われますので50mW〜60mW位となるでしょう。
 このデバイスの使用上の注意点としては、+10dbm(10mW)以上のパワーは絶対に入力しないようにすることです。もし入力した場合は、ICが破損します。10mW以上のパワーを入力する場合はアッテネータなどで減衰させてからにしましょう。
以上のことを踏まえて製作に取りかかりましょう。製作時の注意点としては、
非常に発振しやすいICですので、アースパターンは多めに取り、各パーツ同士の接続距離はできるだけ短くすることです。

今回は、専用アンプということで以下のような仕様にします。

●電源入力はDC6V〜14V 200mA以上とする(内部で3端子レギュレータを使用し定電圧化)
●RF入/出力端子はBNC端子を採用
●出力段には2段RFフィルタを搭載
必要パーツを集める
 製作に必要なパーツを集めます。μPC1677C以外は、特に入手困難な部品はありません。私の場合今回は秋葉原の千石電商でほとんどのパーツを購入しました。このお店は良く使う部品をまとめて入手できるので便利です。予算は2,000円前後です。
部品名 メーカー名 型番 個数 単価 合計
ケース TAKACHI YM-90 1 440 440
IC NEC μPC1677C 1 350 350
IC JRC 7805(相当品で可) 1 60 60
RFコイル FCZ研究所 80MHz 2 180 360
電解コンデンサ 16V/10μF 2 10 20
セラミックコンデンサ 0.1μF(102) 2 10 20
セラミックコンデンサ 0.01μF(103) 1 5 5
セラミックコンデンサ 10pf 1 5 5
セラミックコンデンサ 3pf 2 5 10
トリマコンデンサ 10pf 1 150 150
蓄積セラミックコンデンサ 0.001μF(104) 1 10 10
コネクタ 50Ω BNCコネクタ 2 180 360
抵抗 560Ω 1 5 5
LED 赤色 1 130 130
コネクタ DCコネクタ 1 80 80
基板 紙フェノール基板 1 100 100

 特に入手困難な部品はありませんが、1677CとFCZ研究所80MHzコイルが若干入手しづらいかもしれません。
 1677Cは秋葉原の秋月電子で購入できますし、FCZコイルは、お隣りの千石電商で購入できます。
 回路が単純ですので、今回は基板を製作せずに基板にパーツをベタで配置していきます。グランドパターンが多く取れ、動作が安定します。

NEC μPC1677C
秋月電子はスペックシートが付属
サンハヤト紙フェノール基板
10番と書いてあります。
各パーツ類
過不足は各自調整してください。

タカチ製アルミケースYM-90
私的にはベストサイズですが、ちょっと小さいかも。
UEW(銅)線 0.5mm 10m
こんなにたくさんは使いませんが。
製作の前に・・・
 今回のアンプは Telstar TR-10RDX へ接続することを前提としています。幸い、TR-10RDXにはアンテナ出力端子が付いていますので、そちらから
RF信号を取り出す必要があります。
 TR-10RDXには手を加えたくない方も多いかと思いますので、コネクタはそのままの音声用ミニジャック(3.5φ)とします。高周波を扱いますので、アンプ側の入出力はBNC端子を採用しました。
3.5φジャック
千石電商で購入しました。
3Dケーブルは太すぎて入り
ませんのでモールを外します。
同軸取付用BNCコネクタ
秋月電子で100円で販売してい
ます。安いですね。パッケージが
くしゃくしゃですいません。
3D-2Vケーブル
3D-FBなどでも良いです。
なるべく短く配線しましょう。
 長さは20cm程にしました。この部分を長くしすぎると損失が大きくなってしまいますので短めにしましょう。
完成後はこのようになります。
製作
 まずは基板をケースのサイズに切り離します。100円カッターで裏表に切り込みを入れて軽く曲げればパキっと割れます。
 PC1677Cの足を加工します。基板に最も近くなるようにピンを曲げてください。入力ピン、出力ピン、電源ピンは横に伸ばします。
 コイルを作ります。5mm〜1cm程の円形のものにさきほどの銅線を巻きつけてコイルを作ります。
私はいつもコイルを作るときに使っているドライバーに巻きつけて作りました。巻き数は10ターンです。
 基板にパーツをハンダ付けしていきます。
ハンダ付けする前に、どの辺にどの部品が付くかのアタリを出しておきます。これをしないと、ハンダ付けした後に場所が足りなかったり、部品同士が干渉したりとスペース不足で惨めな思いをすることになります(笑)
 基板完成写真です。
ハンダ付けがうまい方が製作するともっときれいになりそうですね。今後精進します(笑)
 コイルの部分はこのように製作してください。
 3本ピンが出ているほうのセンターの1本はニッパーで切り離してください。また、コイルとコイルはあまったジャンパでハンダ付けしてください。
コイルのコアはかなり熱に弱いので、すばやくハンダ付けしてください。
 基板完成後はケースに入れます。
ケースのBNC端子と基板は手抜きをせずに同軸ケーブルで配線してください。
 蓋へ電源LEDの取り付けを行い、ケースの蓋を閉めて完成です。
 TR-10RDXとの接続
先ほど製作した接続ケーブルとつないでみます。
接続後にRF-OUTへパワー計を接続し、FCZコイルのコアを調整してください。パワーが最も出るポイントに調整します。
製作を終えて
 88.0MHzで調整を行ったところ、出力は50mw程となりました。
通常の使用においては不足がないレベルまで増幅できています。

 今後の課題としては、パワーモジュールをドライブすることを目的とした1w前後まで引っ張れる12V動作のポータブルアンプを製作したいです。
ファイナルはこの周波数帯では良く使われる三菱電気の2SC1970を使用したいと思います。このトランジスタをドライブするには50mwは少々
足りませんので1677Cの前段へ挿入するトランジスタが必要です。
 また、出力が1wと大きく、トロイダルコアを使用したフィルタも組み合わせますので、ケースが今のままでは納まらなくなります。基板も切り離す前の状態のサイズでちょうどよさそうです。
 送信出力は半固定抵抗で可変できるように設計します。
完成しましたらまたご紹介致します。

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