Pioneer製 カーステレオ専用トランスミッタ CXB3762 解剖
2003/03/28
 経緯

かの有名なヤフーオークションにて、カーステレオ用のトランスミッタが出品されていました。
 普段は、特に見向きもしないのですが、この製品は本体背面にDIPスイッチが搭載されているようで、「PLL制御かも!」と思い、
値段の安さも手伝ってか落札してしまいました。 ROHMのPLL内蔵のLSIが入ってたらもうけもん!部品取り用でもいいよね、ぐらいの思いでした。
 本体全面と背面

 実際に使われていたもののようで、かなり汚れています。
 全面には、左からRF出力端子、音声レベル調整ボリューム、音声入力端子(L/R)があります。
 RF出力がRCAジャックなのは嬉しいです。電源ケーブルは、本体直付けになっています。

 本体背面には、型名表示と周波数設定表・周波数設定ディップスイッチがあります。
 周波数帯は低いバンドに設定されています。
設定周波数 SW1 SW2 SW3 SW4
77.5MHz OFF OFF OFF OFF
77.7MHz ON OFF OFF OFF
77.8MHz OFF ON OFF OFF
78.1MHz OFF OFF ON OFF
78.3MHz OFF OFF OFF ON
 本体ケースを開けた様子

 ネジ6個を外しケースを外します。
 金属ケースですので、シールド性もよさそうですし、なにより作りがしっかりしています。
 基板写真

 どうやら、ROHMのICは見当たらないようです。
 しかし、水晶が3つも搭載されています。周波数は38KHz(パイロット信号用)、7.2MHz(用途不明)、455KHz(用途不明)です。
 表側には、東芝のICが一つ乗っている以外、目立つ部品はありません。ちょっと期待外れでした。
 しかし、各所にコンデンサが配置されており、好感がもてます。
 さすが音響メーカーということだけあって、電源周りは多少手を入れているようです。

 調整ポイントがかなり目立ちます。
 左側から「RF.LEVEL」、「FREQUENCY VOLTAGE」、 「SEPARATION」、 「MOD.LEVEL」、「PILOT.LEVEL」、 「DC.OFFSET」、「音声入力ゲイン調整ボリューム」、「無印RFコイル2つ」となります。

 特に「RF.LEVEL」と「PILOT LEVEL」が気になります。
 後ほど調整を試みたいと思いますが、元に戻せなくなる恐れがあるので現在の設定値をマジックなどでマーキングしておきます。
ROHM BA1405F
BA1404と違いはあるのでしょうか?
 本体基板背面

 あった!ありましたROHMのIC。が、BA1405Fとの表記があります。がーん・・・。これってBA1404ファミリーじゃん・・・(´・ω・`)
 しかし気を落とすのはまだ早く、全体を見渡すとDIPスイッチ周りにPioneer自社製LSIがあります。こいつがどうやらPLLの制御をしている模様。
 データもなにもないので仕様は全く不明。

 ICは、全部で「TOSHIBA TA2050S 9PIN」、「ROHM BA1405F 18PIN」、「Pioneer PD4737AF27 20PIN」、「4570? 8PIN」、「2611FS? 16PIN」がありました。
 ちなみに、裏面にはチップトランジスタが9個張りついていました。

 しかし、カーステのトランスミッタごときにこんなに部品が搭載されているとは思っていませんでした。
 今までは 「カーステ向け製品 = ゴミ同然性能がよくない」 と小バカにしてましたよ。食わず嫌いとはまさにこのこと。

 改造部分アップ

 送信出力を簡易計測したところ、恐ろしく小さいことが判明しました。
 そこで、さきほどの、「RF.LEVEL」をめいっぱいまで大きくしたところ、送信出力が概ね2倍になりました。

 終段Trへの電圧を変えているのかな?と思い、基板のパターンを追っていったところ、なんと回路と直列で半固定抵抗(VR306)が挿入されているだけとのことが判明。そこで、早速基板裏にまわり半固定を短絡させます。

 送信出力が大変小さいため、RFブロープで測定しました。
 GNDを接続しない簡易測定でしたので、測定結果がかなり変化しましたが、送信出力は2倍〜3倍ほどにおちつきました。

RFブロープによる簡易測定結果
改造前 改造後
 総合評価

 さて、早速電源を入れてみます。
 電源電圧の表記がありませんでしたが、クルマ向け製品なので12VでOKでしょう。ま、壊れても1,000円だからどうってことない。

 実際にPLLがロックし、安定するまでに、数秒かかります。
 無変調時のノイズですが、以前紹介したTR-10RDXでは、リップルノイズが乗っていたACアダプタを使用してもこの製品では全く乗りませんでした。恐らく電源入力部のトランスと電解コンデンサが影響しているのでしょう。
 リップル以外のホワイトノイズに関しては、はかなり低いレベルに抑えられています。ここはさすがカーステレオメーカーといったところでしょうか。具体的に説明すると、市販品1万円台トランスミッタ以上です。かなり深い変調がかかります。
 出力は大きくなっているので、電界強度は問題がないのですが、パイロット信号が弱いように感じます。
 半固定を調整してなんとかなるものか試してみる予定です。

 肝心の音質はというと・・・うーん、YO-10B + α といったところでしょうか。
 まぁ中心のICがYO-10Bと同等性能ですので、このような結果になってしまうのは仕方ないですね。
 この製品の場合、特に低音が強調されているように感じます。高音があまり出ていないとも感じますので、ローパスフィルターがかかっているのでしょうか。それともコンデンサの寿命でしょうか。

 トータル的な音質は、YO-10Bには勝りますが、TR-10RDXに劣ります。
 改めて、あのような少ないパーツで高音質を実現しているTR-10RDX恐るべし。
 というか、
ROHMの技術力恐るべし

 この製品は、内部のICなどの刻印から判断したのですが、恐らく1998年前後の製品のようでした。
 まだROHMのICが発表になる前です。

 しかし、これでPioneerのトランスミッタ関係製品はまじめに作られていることが判明しましたので、新製品はないかとちょっと検索してみたところ、しっかり発売している模様。ROHMのデバイスを採用すると、かなり低コスト化&低価格化に貢献できると思いますので、採用されている可能性大です。オークションで安く出品していたら捕獲して、また分解してみたいと思います。

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