ディスクシステムとは?
 任天堂ディスクシステムのテクノロジ
 QDを使用したファミコン用外部記録装置の開発が、水面下でスタートした。
その前に、QDとはどういった装置なんだろうか。

 現在コンピュータ用として広く普及している3.5インチフロッピーディスクとは
外見こそ似ているが内部は大きく異なり特徴的なメディアである。

 数ある相違点の中でも特筆すべきことにアクセス方法が挙げられる。

 フロッピーディスクのアクセス方法は、記録されている様々なファイルの
目的のファイルだけを参照することができるが(これをランダムアクセスという)、
QDはその単純な構造上、ディスクの先頭から終了までを8秒間で一気に
読み込み、必要なデータのみを参照するという方式(シーケンシャルアクセス
をとっている。
 ターゲットのデータ以外はすべて読み捨てるという意味では、カセットテープを記録媒体として利用した「データレコーダ」に
似ているかも知れない。

 また、フロッピーディスクは、切り株のように1週に渡って同心円状のデータ領域があり(これをシリンダという)その単位で
アクセスするが、クイックディスクはコマのヒモのように長いデータトラックが1本存在するのみである。
これは丁度レコードの記録方法と似ている。

 フロッピーディスクのランダムアクセス方式が理想だが、構造が複雑になりコスト増に繋がる。
 シーケンシャルアクセスは構造が単純でコストがかからないが、不要なデータを読み捨てる必要があるため読み込みに
時間がかかってしまう。

 理想的には、片面64KBなので64KB分のメモリを用意すれば1度のロードで片面分がすべてメモリにロードでき、以降はメモリから
読み込むことによって高速化できるが、当時はメモリが大変高価で、コストの面から16KB分しか搭載できなかった。

 ではディスクシステムの特徴を挙げてみよう。
任天堂ディスクシステムの特徴
2.8インチ両面磁気ディスクを採用(製造:日立マクセル)
ディスクの単価は450円
記憶容量は片面64KBの両面128KBの大容量
データロード時間は8秒と高速
ゲームの途中経過が保存できる
拡張FM音源の搭載
ROM製造コストが不要のためソフトが安価で提供できる(2,500円〜)
書き換えサービス利用時は500円とリーズナブル
 画期的かつ夢のような仕様だった。

 実際、任天堂が販促に使っていたキャッチである「夢いっぱいディスク」にも
任天堂がどれだけディスクシステムに情熱をかけているかが感じられた。

 やはり特記すべきことは「書き換えサービス」これに尽きる。

 今までゲームは飽きてしまったらそれまで、タンスの肥やしか中古ショップへ
買いとってもらうしかなかった。
 流通の常識さえも覆してしまう「書き換えサービス」はお金のないゲーム少年の
心を掴んで離さなかった。
 採用されたメディアはコピー対策として、市販されているQDの縦の長さを
若干長くし、呼称を「ディスクカード」とした。

 任天堂は以前、コピー対策としてファミコンカートリッジ自体の「形状」を
特許登録し、同じ形の製品を発売させないという手法を行っていた。

今回もカード下部に「Nintendo」の刻印を施し、本体側の刻印と合致することで
正しくセットできるよう、対策を講じた。

 一般向けには標準タイプの黄色、シャッター付き特殊カードの青色ディスクの
2種類のディスクカードをリリースした。

 他に開発者用白ディスク、ディスクカード検品用ピンクディスク、
キャンペーンプレゼント用金ディスクなどがあった。
 
 ディスクカードにはA面、B面とあり、容量が許されれば片面づつ別のソフトを入れることが可能。
しかし、QDは読み取りヘッドが片面しか実装されていないため、A面B面を入れ替える必要があった。

 また、今回ファミコン周辺機器として初めて搭載された拡張FM音源(正確にはPWM音源)の音色は必聴モノで、
最初にして最高の完成度を誇った「任天堂 ゼルダの伝説」のオープニングテーマでは泣く子も黙る素晴らしい音色を奏でていた。

 下記にゼルダの伝説のサンプルサウンドを用意したので、ぜひPWM音源の良さを実際に体感して頂きたい。
任天堂 ゼルダの伝説 オープニングテーマ
1.ファミコン標準音源+拡張PWM音源
(ディスクシステムから出力されたオリジナル状態)
2.ファミコン標準音源のみ
(1.から拡張PWM音源を取り除いた状態)
3.拡張PWM音源のみ
(1.から拡張PWM音源のみ抽出)
4.ファミコンカートリッジ版 ゼルダの伝説
(ファミコン用にアレンジされたバージョン)

ゼルダの伝説
(C)1986 任天堂
 ディスクシステムは海外では発売せず、日本国内のみの販売で、周辺機器としては異例の400万台の大ヒットを果たした。

 玩具店店頭では「ディスクシステムは入荷待ちです」の張り紙が並び、いち早くディスクシステムを入手した者はヒーローと
なった。皆、カセット以外の未知のメディアである「ディスクカード」に釘付けになった。
       
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